有意義に使われるAPIのベストプラクティスとは?クラウドサービスのAPIエコシステム状況を可視化してわかってきたこと

システムエンジニアの杉本和也氏が、クラウドサービスの公開しているAPIのエコシステム状況を可視化する「API Eco MAPプロジェクト」を進めています。

「エコシステム」とは、サービスを構築する際、自社単独ですべての開発をおこなうのではなく、APIでリソースを公開し、他の開発者たちにこれを活用して新たなサービスを生み出してもらうことで、サービスを発展させるという考え方です。

エコシステムを発展させることは、クラウドサービスにおいても競争力となり、またサービスをスケールしていく上での要となります。そのため、昨今APIの公開数は飛躍的に増加傾向にあります。

ただし、有意義に使われるAPIであるか否か、サービスのスケールに貢献するAPIか否か、どうすればスケールできるAPIたりえるか、については、現状明確なベストプラクティスが出来上がっていないのではないかと、杉本氏は語っています。

ゆえにまずは、各社サービスでどのような形でAPIエコシステムを構成しているかを可視化するに至ったとのことです。

記事では、各クラウドサービスが公開しているAPIとSDKの数を表すグラフが掲載されています。このグラフでは、有名サービスが軒並み上位を占めています。

また、各クラウドサービスがAPIを通じて接続可能なサードパーティツール数のグラフでは、Salesforceが圧倒的な数のサードパーティツールと接続できることが分かります。

杉本氏はこの結果から、開発者だけでなくエンドユーザーの利用するツールからもAPIで接続できることが、APIエコシステムに一役買っているのではないか、と推測しています。

卵が先か、鶏が先か、というのはあるかと思いますが、周辺環境が強力であればあるほど、自走する力がつくのは自明です。

(中略)

もちろん、有名になればなるほど、周りがそのAPIを使って開発してくれるというのは間違いありませんが、私自身の経験としても、例えばSaleforceやMicrosoft Dynamicsは相当初期からAPI公開を行っていますので、周辺環境・開発者にリーチしながら進めているということは間違いないものと思います。

上述のグラフでは、海外製のクラウドサービスの方が、APIの公開数や接続可能なサードパーティツールの数が多いという傾向も見られましたが、一方で国産クラウドサービスに特化した分析もされています。

BIやETLで接続可能なサードパーティツール数では、現状、日本のクラウドサービスは対応しているところのほうが少ないようです。

杉本氏はこれに対し、API公開のみにとどまりSDKや連携先のツールがないことによって、開発者や各種ツールベンダーへのフォローアップができず、エコシステムの構築を促せていないのではないかと言及しています。

ただし、サイボウズのKintoneのように、APIの公開にとどまらずSDKの充実にも力を入れている企業もあります。同社は、最近MicrosoftのFlowとの連携も発表され、周辺環境やコミュニティを巻き込みエコシステムを拡大しながら成長しているようです。

杉本氏は今後、クラウドサービス対クラウドサービスの連携についても考察していくとのこと。ひいては、このレポート自体をWebサイトとAPIで公開し、誰でも分析・可視化できるようにすることも視野に入れているそうです。

なぜそのAPIは使われないのか? クラウドサービスのAPIエコシステムを可視化する API Eco MAP プロジェクト – Morning Girl