【最新2019年度版】AI技術で変わる医療業界 -注目ベンチャー企業5選-

AI医療業界の動向

国内の医療分野におけるAI関連市場

2019年、日本ではじめて医療用AI機器の製造・販売が、厚生労働省や第三者認証期間によって許可されました。今まで医療用AI機器は研究段階のものばかりでしたが、今後、多くの医療用AI機器が実用化・販売されることが予想されます。


富士経済 「医療分野におけるIoT、AI関連の国内市場を調査」より引用

上図は調査会社である富士経済が発表した、医療分野におけるAI関連の国内市場予測です。2016年には37億円であった市場が、2025年には4倍以上の150億円になると予測されています。

市場拡大の理由

では、いったいなぜ医療分野のAI関連市場はここまで成長するといわれているのでしょうか?
富士経済は、医療分野のAI関連市場を

  1. AI創薬システム
  2. 製薬企業向けAIシステム
  3. 診断支援システム / 類似症例検索システム

の三つに分類しています。

富士経済は、三つの市場がそれぞれ成長すると予測しています。

■AI創薬システム
AI創薬システムとは、製薬企業内の実験データ、過去の論文データなどの事例を学習させたAIを用いることで、薬品開発の効率化を図ろうとするものです。製薬技術を高めることはあらゆる製薬会社が直面している課題であり、企業の競争力に直結するため、今後かなりの資金が投入されると見込まれています。
■製薬企業向け営業支援AIシステム
製薬企業向け営業支援AIシステムとは、医療機関向けに薬品を販売するいわゆるMRの業務を、AIシステムによって効率化させようとするものです。MRの顧客となる医療施設の動向、地域データなどをAIに学習させることで、効率的な営業活動が可能になるといいます。
■診断支援システム / 類似症例検索システム
診断支援システム/類似症例検索システムとは、症例データや論文データを学習したAIが、医師の診断・治療方針の決定を補助するというものです。医療関係の論文の数は大変多く、医師が全てをカバーすることは困難となっています。最新の論文を大量に学習したAIが医師の診察を補助した場合、診察の精度・効率は大きく向上するといえるでしょう。

では、拡大する医療分野のAI関連市場で活躍が期待されるのは、いったいどのような企業なのでしょうか?

医療分野におけるIoT、AI関連の国内市場を調査 – 株式会社 富士経済

【最新版】AI医療分野の注目企業5選

医療業界でAIを活用した事業、研究を行なっている代表的な企業をご紹介します。いずれも2010年以降に設立された、新しいベンチャー企業です。

Holoeyes株式会社

Holoeyes株式会社は、診察や手術などの現場で、三次元のVR(Virtual Reality)やMR(Mixed Reality)技術を応用しているベンチャー企業です。HoloeyesXRと呼ばれる医療用仮想現実システムを提供し、2019年には特許も取得しました。

【Lonovo Mirage Soloでの活用】

【VRを活用したカンファレンス】

会社名Holoeyes株式会社
設立年2016年
株式公開市場未上場
代表取締役社長谷口直嗣
会社ホームページhttps://holoeyes.jp/

株式会社サイシード

株式会社サイシードは、医療機関・部品メーカー・不動産仲介業者に向けに、チャットサービス「sAI Chat」を提供しています。「sAI Chat」には、AIを活用した「半自動チャットボット」が搭載されています。
「半自動チャットボット」を利用すれば、コールセンターやカスタマーサポートなど、人手が必要になる現場の業務を効率化することが可能です。

従来も自動で顧客対応をするチャットボットのサービスはありましたが、AIを利用した「半自動チャットボット」では、ユーザーに対し正確な回答が求められるヘルスケア領域でも活躍が期待されます。
半自動という半分は人間による業務であることから、顧客サポートが正確になされるという点が大きなメリットです。

会社名株式会社サイシード
設立年2015年
株式公開市場未上場
代表取締役社長中村 陽二
会社ホームページhttps://www.sciseed.jp/

sAI Chat – Scieed

『sAI Chat』に、チャットボット業界初となる『半自動チャットボット』を搭載 – PR TIMES

株式会社エルピクセル

エルピクセル株式会社は、医療用AI支援の領域で注目されている企業です。東京大学でライフサイエンス分野の画像解析技術などを研究していた島原氏ら3人が2017年に立ち上げたのがはじまりであるといいます。

ライフサイエンス領域の画像解析ソフトウェア・システムに強みを持ち、2018年にはオリンパス、富士フイルムなどから、総額約30億円の資金調達を行ないました。

【資金調達 参加事業会社】

  • オリンパス株式会社
  • CYBERDYNE株式会社
  • テクマトリックス株式会社
  • 富士フイルム株式会社

【資金調達 参加ベンチャーキャピタル】

  • SBIインベストメント株式会社
  • CEJキャピタル株式会社
  • 株式会社ジャフコ
会社名エルピクセル株式会社
設立年2014年
株式公開市場未上場
代表取締役社長島原 佑基
会社ホームページhttps://lpixel.net/

AI画像診断で医療現場を変えるエルピクセルが30億円を調達、オリンパスや富士フイルムとタッグで事業加速へ – TechCrunch

株式会社MOLCURE

株式会社Molcureは、抗体医薬品探索プラットフォームAbtracerを提供しています。Abracerは、抗体医薬と呼ばれる副作用が少ないことで注目されている治療薬を、独自の人工知能技術を活用することで、効率的に探し当てるシステムです。

従来の手法と比較して、最短で約1/10の時間で10倍以上の抗体医薬品候補を探すことも可能であり、医薬品開発に大きなメリットをもたらすことが予想されます。

【株式会社MOLCURE 取締役CTO 興野 悠太郎氏によるTEDスピーチ】

会社名株式会社MOLCURE
設立年2013年
株式公開市場未上場
代表取締役社長小川 隆
会社ホームページhttp://molcure.com/

株式会社MOLCURE – バイオベンチャー ダイレクトリー

第95回新技術開発-07 – 公益財団法人 市村清新技術財団

株式会社PFDeNA

株式会社PFDeNAは、日本最大のユニコーン企業であるプリファード・ネットワークスと国内有数のITベンチャー企業DeNAの合弁会社です。プリファード・ネットワークスの高い深層学習技術と、DeNAがメディアサイト運営を通じて取得した数多くのデータを組み合わせることによって、新たなAIサービスを開発していくことを目的に設立された会社であるといいます。

2018年、株式会社PFDeNAは、少量の血液から14種類のガンを早期発見する検査システムの開発開始を発表しました。日本人のがんによる死亡率の高さ、検診コストの高さ、医療費の高さといった課題が、この研究の背景にあるといいます。国立がんセンターから提供された血液検体・臨床情報を活用して研究を行い、2021年には実用化する目標です。

会社名株式会社PFDeNA
設立年2016年
株式公開市場未上場
代表取締役社長守安 功
会社ホームページhttps://pfdena.com/

最後に

医療分野へのAI活用の試みは、急速に広がってきています。
今後も市場、ベンチャー企業、医療機関などの動きから目が離せません。