AI開発はアメリカが先行

ニュースや新聞、ネットメディアなどを見ると
「AIの研究・開発では、日本はアメリカはおろか中国にも遅れをとっている。必死になって日本も”AI”をやらないといけない。」
といった議論がなされています。
「日本は製造業などモノづくりでは成功したが、情報産業ではアメリカに負けている。
これは、日本人が古い考えに縛られて柔軟な発想ができなかったり、リスクをとって挑戦する若者も少なく”イノベーション”が起きないからだ。」
などといった意見も耳にします。
日本のAI開発が遅れている理由は、本当に日本人の考え方や意識によるものなのでしょうか?
アメリカのAI予算は日本の6倍以上
文部科学省の集計によると、アメリカのAI関連予算は日本の6倍以上の5,000億円であるといいます。
中国の4,500億円と比較しても、日本のAI関連予算は2割未満にとどまります。
アメリカ | 5,000億円 |
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中国 | 4,500億円 |
日本 | 770億円 |
AI開発で日本が遅れをとっているのは、考え方や意識以前に、そもそも研究・開発に投下されている資金の桁が違うからではないでしょうか?
AI予算、米中の2割以下 18年度770億円 過去最大も財政面に制約 – SankeiBiz
民間のAI関連投資を主導する企業たち
民間企業におけるAI関連投資でも、アメリカは大きく先行しています。
GAFAと呼ばれる巨大なIT企業たちは、その資金力と高度なIT人材を活用してAI企業やAI開発に積極的に投資しています。
- GAFA
- グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの頭文字をとって総称する呼び方。
時価総額が非常に高く、世界的に影響力のある巨大なIT企業の4社である。
アップル | 8,960億ドル |
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アマゾン | 8,750億ドル |
アルファベット | 8,170億ドル |
フェイスブック | 4,760億ドル |
※アルファベットはグーグルの持ち株会社
世界時価総額ランキング – Think 180 around
時価総額が大きいということはすなわち、多額の資金を調達できることを意味します。
証券市場から調達した資金を活用し、有望なAIベンチャーやAI開発に積極的に投資をしています。
トヨタ | 1,980億ドル |
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SBG | 1,080億ドル |
NTT | 810億ドル |
日本には、GAFAのような時価総額の企業は存在しません。
日本で時価総額が最も大きいトヨタは、IT企業ではないため、優れたAI技術やAIベンチャーを目利きすることは難しいといえます。
今後のAI技術、産業の動向を知るには、AI開発で先行しているアメリカや中国、GAFAのような大手AI企業の動向が参考になるのではないでしょうか?
アメリカの注目AI企業9選

今回は、GAFAの一角であるアルファベットが所有するベンチャーキャピタル、GV(旧Google Ventures)が投資したAI企業をご紹介します。
※ご紹介するのは、GVのホームページ(英語)上にある「Data&AI」に掲載された企業です。
会社名 | GV |
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代表名 | David Krane |
創立年 | 2009年 |
総資産 | 24億ドル(約2,700億円) |
親会社 | Alphabet Inc.(Googleの持ち株会社) |
会社ホームページ | https://www.gv.com/ |
ファーマーズ・ビジネス・ネットワーク
ファーマーズ・ビジネス・ネットワークは、農業分野でビッグデータ解析サービスを行う企業です。
農地の地質を分析することで、農作物の収穫高予測などを予測しているといいます。
たねや肥料を撒くタイミングなども、蓄積されたビッグデータからより効果的な方法を知ることができるようです。
農業におけるビッグデータ解析により、効率的かつ確実性の高い農業が可能になります。
会社名 | Farmer’s Business Network, Inc. |
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事業内容 | 農業におけるビッグデータ解析サービス |
代表名 | Rick Tolman, George Thornton |
創立年 | 2014年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://www.fbn.com/ |
Google Ventures 投資家 | Andy Wheeler |
関連記事 | 農業の無駄を省くべくFarmers Business Networkが2000万ドルを調達 – TechCrunch |
ファーマーズ・ビジネス・ネットワーク(Farmers Business Network)は、どのようなポテンシャルな会社か? – 食農の知りたい!
クラウデラ
クラウデラは、法人向けにビッグデータの分散処理技術「Hadoop」を提供する企業です。
2008年にGoogle、Yahoo!出身の3人のエンジニアによって設立されました。
2018年には、同じくビッグデータ関連の企業であるホートンワークスと52億ドル規模の合併を行なっています。
下の動画が、合併の際のインタビューです。
Fireside Chat – Tom Reilly, Cloudera, moderated by Ron Miller, TechCrunch from V-cube USA on Vimeo.
会社名 | Cloudera, Inc. |
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事業内容 | Hadoopプロバイダー |
代表名 | Tom Reilly |
創立年 | 2008年 |
株式公開状況 | ※Hortonworksと合併 |
会社ホームページ | https://www.cloudera.com/ |
Google Ventures 投資家 | Karim Faris |
関連記事 | ClouderaとHortonworksが52億ドルの合併を発表 – TechCrunch |
アーバン・エンジンズ
アーバン・エンジンズは、交通機関の利用者ビッグデータを解析する企業でした。
2004年に元グーグル社員たちによって立ち上げられ、2016年にグーグルに買収されています。
アーバン・エンジンズは、モバイル位置情報の機能性を向上させるサービスを提供しており、
グーグルはその技術を「Google Maps」に組み込む目的で買収したようです。
会社名 | Urban Engines, Inc. |
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事業内容 | 交通機関のビッグデータ分析 |
代表名 | Shiva Shivakumar |
創立年 | 2012年 |
株式公開状況 | ※Googleにより買収 |
会社ホームページ | なし |
Google Ventures 投資家 | David Krane |
関連記事 | グーグル、位置情報分析のUrban Enginesを買収–地図サービス強化へ – CNET Japan |
LAN/WAN最適化の手法で、都市交通を効率化できる – 日経XTECH
オービタル・インサイト
オービタル・インサイトは、NASAで火星探査機のソフトフェアを開発したジェームズ・クロスフォードが設立した会社です。
ジェームズは、NASA退職後、Google Booksに在籍していました。
新興企業の参入により、人工衛星の打ち上げ、製造コストが劇的に下がるのをみて、オービタルを設立したといいいます。
ジェームズは以下のように語ります。
これから人工衛星の数はどんどん増え、地上へ送ってくるデータや画像もぐんと増える。そうしたデータを収集し、解析すれば有益な情報が得られるはずだ。
オービタルは、「オルタナティブ・データ」と呼ばれるデータを扱う企業です。
市場調査会社のタブ・グループによると、オルタナティブ・データ市場は2020年には4億ドルを越えるといいます。
SNS投稿やオンライン動画、衛生画像、IoTセンサーなど、技術の進展により得られることが可能となったデータ群のことを指す。
会社名 | Orbital Insight, Inc. |
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代表名 | James Crawford |
創立年 | 2013年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://orbitalinsight.com/ |
Google Ventures 投資家 | Andy Wheeler |
関連記事 | オービタル・インサイト(Orbital Insight):メーデーなので「人工知能AIと人間、仕事、雇用の関係」の記事 – 人工知能ムスメは独身男の夢を見るか |
フルストーリー
フルストーリーは、サイトに訪れたユーザーの動きをリプレイする、アクセス解析ツールを提供する企業です。
従来のGoogle Analyticsなどのツールは、数値やグラフで各種指標を表示するだけでしたが、フルストーリーの解析ツールでは、ユーザーのマウスの動きまで調べることができます。
下が、フルストーリーの解析ツールを使用した時の動画です。
会社名 | FullStory |
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代表名 | Scott Voigt |
創立年 | 2014年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://www.fullstory.com/ |
Google Ventures 投資家 | Karim Faris |
関連記事 | サイトに訪れたユーザーの動きを「リプレイ」するアクセス解析ツールFullStoryが120万ドル調達 – THE BRIDGE |
イオニック・セキュリティ
イオニック・セキュリティは、オンライン上のアクセス制御、知的財産の監視、データの暗号化、ポリシー管理などのサービスを提供する企業です。
2019年には、クラウド上のファイルを暗号化する技術を開発するため、新たに4,000万ドルを調達しました。
2017年にはGoogle Cloudと戦略的な技術提携も結んでおり、イオニック・セキュリティが調達した額は合計およそ1億6,240万ドルとなったようです。
会社名 | Ionic Security Inc. |
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代表名 | Adam Ghetti |
創立年 | 2011年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://www.ionic.com/ |
Google Ventures 投資家 | Blake Byers, Karim Faris |
関連記事 | Ionic Security raises $40 million to encrypt files accessed on the cloud – VentureBeat |
アノマリ
アノマリは、機械学習を活用した、インターネット上でのセキュリティサービスを提供する企業です。
ハッキング攻撃などを検出し、攻撃元を特定します。
2016年には、シリーズCで3,000万ドルの資金調達を行い、合計調達額が5,600万ドルを超えました。
会社名 | Anomal |
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代表名 | Hugh Njemanze |
創立年 | 2013年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://www.anomali.com/ |
Google Ventures 投資家 | Karim Faris |
関連記事 | 米国セキュリティスタートアップAnomali、GVなどからシリーズCで約33億円を資金調達 – pedia |
Tamr
Tamrは、MIT初でビッグデータ関連のベンチャー企業です。
Tamrは企業向けのデータ関連サービスを提供しており、社内のExcelシートを含む様々なデータを関連付け、整理、統合し、分析しやすくするといいます。
機械学習などの技術を利用したアルゴリズムによって、データ処理作業が半自動的になされる点が特徴であるようです。
2014年には、Tamrは1,600万ドルの資金調達を行いました。
会社名 | Tamr, Inc. |
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代表名 | Andy Palmer |
創立年 | 2013年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://www.tamr.com/ |
Google Ventures 投資家 | Karim Faris |
関連記事 | Googleが投資した「Tamr」とは? 使うほどに賢くなるデータウェアハウス – ビジネス+IT |
クックルーチ・ラボス
クックルーチ・ラボスは、2015年にグーグル出身の三人のプログラマーによって設立されました。
CockroachDBと呼ばれる、クラウドサービス向けのSQLデータベースを提供しており、2017年には2,700万ドルの資金調達を行なっています。
社名にあるCockroachとは日本語でゴキブリという意味です。
会社名 | Cockroach Labs |
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代表名 | Spencer Kimball |
創立年 | 2015年 |
株式公開状況 | 非上場 |
会社ホームページ | https://www.cockroachlabs.com/ |
Google Ventures 投資家 | Dave Munichiello, Erik Nordlander |
関連記事 | Cockroach Labsが複数のクラウドにまたがるデータベースCockroachDBのマネージドサービスを開始 – TechrCrunch |
最後に

アメリカではAI関連の予算が大きく、巨大なIT企業も集まっています。
AI技術で先行しているアメリカから学ぶことで、日本からも優れたAI関連の技術・ベンチャー企業がたくさん生まれるといいですね。