2018年1月16日、電子行政の関係閣僚で構成する「eガバメント閣僚会議」において、「デジタル・ガバメント実行計画」が発表されました。
「デジタル・ガバメント実行計画」は「本格的に国民・事業者の利便性向上に重点を置き、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直すデジタル・ガバメントの実現を目指す」ことを趣旨としています。
これまでにも電子政府の実現に関する様々な構想や計画が持ち上がりましたが、これらの計画との違いについて、マイナンバーエバンジェリストの中尾健一氏が解説しています。
まず「利用者中心の行政サービス改革」の章では、利用者中心の行政サービスを提供するための基本方針となる「サービス設計 12箇条」が掲げられています。
この中で「第8条 自分で作りすぎない」という項目があります。要約すると、政府が新たにサービスを作る際、以下の点について検討することを定めています。
- できるだけ既存のシステムを再利用したり、民間サービスを利用すること
- サービスを作る必要性について検討し、過剰な機能や独自技術の活用を避けること
- API連携等によって、リソースが他のサービスでも共有できるものとすること
これは、これまで前例主義であった政府が発表する計画には見られなかった点だ、と中尾氏は話しています。
このような方針が政府に浸透していくことによって、デジタル・ガバメントがよりスピーディに実現することが期待されます。
また、「横断的サービス改革」の章では、行政手続きの100%デジタル化実現にむけた取り組み内容が記されています。
この中で、デジタル・ガバメントの実現においてキーになるであろう取り組みが「業務改革(BPR)の徹底」です。
中尾氏はこれ以前の連載でも、「今ある行政手続をそのままデジタル化するのではなく、利用者の視点から手続きそのものを0から組み立て、デジタル化することが大事」と提言しています。
この訴えに応えるかのように、同計画では、ユーザー視点の欠如・現状を改変不能なものと考える姿勢・慣習への無意識な追従が、利便性の高い行政サービスの実現においての弊害になるとされています。
業務改革(BPR)に記された取り組み内容が徹底されることが、「手続オンライン化の徹底」や「添付書類の撤廃に向けた取組」、「ワンストップサービスの推進」において利用者が利便性をもたらすためのキーポイントとなるでしょう。
「デジタル・ガバメント実行計画」は、上記の通り、これまでの計画における改善点もふまえた内容に進化していると言えるでしょう。
ただし、電子政府の実現における取り組みのひとつであるマイナンバー制度は、未だ利用者にとって利便性を感じられる制度とは言い難いです。「デジタル・ガバメント実行計画」で挙げられた改革案については、これまでの計画より堅実に浸透させていってほしいものです。