目次
- 国際航業ではどういった仕事をやっておられるのでしょうか?
- エネがえるが生まれたきっかけはなんでしょうか?
- 会社としてどういう体制でやっていくか、どう予算を投下するか、最初の1年でどう評価するか、お聞かせください。
- エネがえるの開発は、何人くらいでやられているのでしょうか?
- 実際にエネがえる使ったユーザーからの反応はいかがでしょう?
- APIを公開した理由はなんでしょうか?
- APIが売れている理由はなんでしょうか?
- Webページをみますと、かなりの数のAPIがあります。おもしろいAPIはあるでしょうか?
- エネがえる利用企業からの要望に対しては、どう対応していますか。
- 今後、お客様の層が広がっていくと、サポートも重要になってくるのでは?
- これまで、開発・販売をしてきて、ユニークことはなかったでしょうか?
- お話を聞いていると、電気以外にも応用が可能ではないでしょうか?
- 現状では、価格的にも家庭用には、蓄電池はまだまだ普及していませんね。
- これからも新しいAPIが追加されるのでしょうか。
- エネがえるをきっかけに一般の方々にもわかる会社にしていくこともありますか?
- エネがえるのニーズは今後も拡大していく
- 最後にユーザー様へアピールしたいことがあればお願いします。
国際航業のエネがえるで、エコライフを実現する
今回は、電気料金シミュレーションなどを行うエネがえるを提供する国際航業の開発に携わるデジタルエネルギーチーム
- 樋口 悟氏
- 櫻田 泰紀氏
- 桑田 正英氏
- 雨森 智弘氏
にお話を伺いました。(左から樋口氏、櫻田氏、桑田氏、雨森氏)
エネがえるの誕生の経緯
-国際航業ではどういった仕事をやっておられるのでしょうか?
樋口:今年で創立 71 年になります。戦後、間もない頃、航空測量を行い地図の作成がスタートでした。
それ以外にも自然災害で航空機での被害状況を撮影もしています。
自治体と協力し、測量・地図の作成・ハザードマップの作成もあります。
土木・建築の関わるコンサルティングであれば、ほぼすべての業務に対応しています。
土木・建築のコンサルティングで、売上の多くの割合を公共自治体が占めています。
JICA などの海外案件も数多く、手掛けています。
ASEAN地域でも、まだ地図がない地域が多いです。
そこで測量の技術を提供し、国の発展に寄与しています。
一方、オリンピックが終われば、受託の仕事も減っていきます。
そこで新規事業を展開していく、あるいは、エネルギー事業も拡大しています。
地理・空間ビジネスと掛け算し、再エネの発電事業でメガソーラーの開発なども親会社の日本アジアグループと共同で展開しています。
自治体とも協力し、地理とエネルギーを掛け合わせて、グリーンコミュニティを造っていくといったことも志向しています。とにかく、新しい事業展開を考えていました。その1つが、我々のデジタルエネルギーチームです。クラウドやインターネットサービスを取り込み、月額制のサービスを提供しようと考えました。
-エネがえるが生まれたきっかけはなんでしょうか?
樋口:電力自由化を背景に、総務省の下で、東北のある地域にてスマートシティやスマートハウスを推進するプロジェクトに参画しました。
太陽光、蓄電池、HEMS(Home Energy Management System)のメーカーなど多くの企業が参加し、最新の技術や設備を投入しているのに、電気代が全然安くならないという問題が発生しました。
そこで、HEMSの調査を開始しました。一般的な電力会社の場合、従量電灯プランがほとんどです。しかし、太陽光やスマートハウスの場合、夜間の電気代が安くなるプランが多かったりします。
そこが最適化されていなかった、つまり、太陽光発電なのに従量電灯プランを設定すると、逆に電気代が高くなってしまうのです。
他にこういったことを手掛けてくれる会社もなかったので、自前でやろうとエネがえるを開発しました。めんどくさい電気プランを簡単に選べるようにしました。利用者は、住宅メーカー、電力会社、エンドユーザーと幅広いですが、よりエンドユーザー目線でエネルギーをわかりやすくというコンセプトで始めました。
そして、太陽光や蓄電池を導入したときの経済効果も付加しました。
ようやくですが、2019 年問題や太陽光の自家消費の流れが浮上しています。
その影響もあり、エネがえるも売上を伸ばしてきました。
ASP として月5万円で販売しているタイプと、APIで計算エンジンを提供するタイプの2つがあります。APIでは、新電力のスタートアップとして話題になっているTRENDE様の電気料金WEBシミュレータなどや大手電機メーカーの独自の太陽光・蓄電池経済効果シミュレータとして活用されています。
有償のAPIで売れているというのは、日本ではそれほど多くはないと思います。
それなりにおもしろいポジションにいるかなと思っています。
-確かに、売れているAPIはそれほど多くないと聞きます。
会社としてどういう体制でやっていくか、どう予算を投下するか、最初の1年でどう評価するか、そのあたりの経緯をお聞かせください。
樋口:スタートは、私が入社する前でした。2015 年くらいに新規事業として企画されて、プロパーの技術者、都市計画などが担当していました。
当時、電力自由化、国際航業として再エネにどう取り組むか、多少の知見はありましたが、上述のスマートシティでの問題から、立案して会長にプレゼンして、
最初は「じゃ、やってみろ」みたいな感じでスタートしたと聞いています。
最初の1、2年は当然、期待されていました。しかし、電力自由化自体がそんなに盛り上がらず、ビジネスとしては早すぎたかもしれません。なんとかサバイバルしながら、4期目で、なんとか見えてきたという感じですね。
-エネがえるの開発は、何人くらいでやられているのでしょうか?
桑田:いちばん最初のときは2、3人でした。あとは、外部の開発会社で、5、6名のスタッフがいました。
今は大規模なAPI改修時期なので大人数で対応しているのですが、基本の運用はこの3人でやっています。それプラス、スポットで1、2人お願いすることもあります。それ以外にデータメンテ用のスタッフが1人いるくらいです。
-大変そうですね。
樋口:そうなんです。膨大な電気料金プランのメンテナンスなどとても煩雑で面倒で誰もやりたくない作業なのですが、実際に担当している担当者は自然に日本一電気料金に詳しくなってしまうんです。
エネがえるの対象ユーザーとAPI公開
-実際にエネがえる使ったユーザーからの反応はいかがでしょう?
雨森:まずASP のエネがえるには、すべての機能が使える 21 日間の無料期間があります。その無料期間中に、自社の製品が売れたというお客様もおられます。
今、蓄電池の導入効果シミュレータを搭載しています。それを使い、蓄電池を導入した際の経済効果を示すことができます。れを活用しようと、蓄電池の販売会社様に使っていただいています。
他では、蓄電池のメーカー様が、この蓄電池と電気プランの組合せでどのくらいの経済効果をシミュレーションするとか、幅広く全方位で使っていただいています。
-APIを公開した理由はなんでしょうか?
桑田:もともと大手通信会社様から、アプリを作りたいというお話がありました。具体的には、電気料金の診断です。お客様が現在使っている電気料金から、
今後、使い続けた場合、毎月、1 年間の電気料金はこれくらいですといったことを提示するものです。
そのために、APIを開発し、提供しました。いまは大手上場企業からスタートアップまで幅広く導入実績が増えてきたため反響による問い合わせや相談も増えているところです。
樋口:エネがえるのお客様にはいくつかのセグメントが存在します。まず、ASPとして太陽光と蓄電池の経済効果をシミュレーションする機能は、太陽光と蓄電池を作っているメーカー様、さらにその製品を扱う商社、訪問販売するような会社が顧客となります。それらのお客様が使うのは、月5万円のASPになります。
一方、APIは、単純にいえばカスタマイズできる点が異なります。たとえば、大手電機メーカーや大手通信キャリア系電力会社などでは、標準のエネがえるでは、電気料金を比較して営業ツールに使い、後から何かを売りたいといったツールとして使っています。
エネがえるの電気料金プラン診断のAPIサービスは、TRENDE様をはじめ大手電力会社や新電力様などで引き合いが多いです。
使い方は、自社のWebサイトに組み込み、ユーザー様に電気料金を比較してもらうという使われ方です。そのような目的で、売れ始めています。
-APIが売れている理由はなんでしょうか?
樋口:太陽光と蓄電池、さらに電気料金プランのシミュレーションや比較は、必ず必要になります。これまでは、せいぜい東京電力と比較すればよかったのですが、電力自由化以降、現在はいろいろな選択肢があります。
すると、蓄電池の販売企業様などは、高度なシミュレーターが必要です
最低限のシミュレーションシステム自体は各社独自に作ることもできると思います。しかし、データのメンテナンスがとてもめんどうなんです。
ならば、お金を払って使わせてもらったほうが楽ですし、API であればインターフェースだけを変更して使えばよいということになります。
そんな経緯から、APIが売れています。
今後は、さらに複雑になっていきます。太陽光×蓄電池×オール電化×電気料金プラン、さらにガス料金プランまで加えたら、とてもめんどうになります。
それをすべて弊社でメンテナンスを行い、シミュレーションしやすいエンジンを開発し、ASP形式とAPI形式で販売することで、お客様のニーズに応えられると思います。
-Webページをみますと、かなりの数のAPIがあります。おもしろいAPIはあるでしょうか?
桑田:一連の流れで、順番に使っていただくようにはなっています。今は、電気料金の診断用APIが人気あります。
今後ですが、太陽光蓄電池のシミュレーションを使ってみたいというお客様もおられるので、そのあたりの人気も高まり、おもしろくなるかもしれません。
現在、調整中でして、100%すべての機能 が使える状態ではありませんが、今後に期待していただきたいです。
やはり主力は、電気料金の診断ですね。エネがえるには、全国235社、2780プランを収録しています(2018年10月末時点)。
エネがえるでは、それらがすべてコストを抑えで使うことができます。
そういったこともメリットになるかと思います。
-たとえば、住宅関連のメーカー様なら、すべて顧客になると。
桑田:そうですね。ほとんどが対象になるかと思います。リフォーム会社様も十分、対象になります。
樋口:今後は自動車業界もターゲットに入ってきます。EVは動く蓄電池とも言われています。となると、自動車メーカーやEV周辺の新規参入企業がすべてわれわれのお客様になってきます。さらにガソリン、石油スタンドなどを展開する会社も脱炭素を志向して再生可能エネルギーを主導するプレイヤーとして変化しつつありますのでここもわれわれのターゲットとなります。
どのプレイヤーも、お客様向けに、こういう組み合わせで家庭に導入するとどれくらいお得になるか?環境的な価値があるか?などのシミュレーションを明示するニーズが発生します。その計算が複雑で面倒であり、かつ最新のデータを集め続ける必要がでてくるため、エネがえるの出番となるのです。
よって、エネがえるは、めんどうで複雑なことをシンプルにして、誰でも簡単に再生可能エネルギーを推進できる主役になれるというビジョンを持って仕事をしています。
-エネがえる利用企業からの要望に対しては、どう対応していますか。
桑田:営業がお客様のところに行き、使い方をレクチャーし、その場でヒアリングしてくることが多いです。それ以外にもツールをいくつか導入しています。
1つは、intercomというチャットツールを導入していまして、ユ ーザーと会話が可能です。そこで、要望や問合せなどを受けています。
-今後、お客様の層が広がっていくと、サポートも重要になってくるのでは?
桑田:そうですね。お客様の要望は、きちんと対応していかないといけないと感じています。そして、その要望を取り込んで、改良を重ねていきたいと思います。
-これまで、開発・販売をしてきて、ユニークことはなかったでしょうか?
桑田:電力プランですが、東京だけで、現在523あります。
もちろん、東京がいちばん多いです。その中で一番お得なプランは、エネがえるを使えば診断できるので、どのプランかはお問い合わせください(笑)。
-まだまだ、意外な発見があると。
桑田:ですね。電気料金でもいろいろあります。それと、おもしろい名前を考えていることもわかりました。東北では、なまはげプランがあります。大阪ではたこ焼きプランとか、北海道ではカニプランなんてのもあります。
また、昼の一定時間が無料とか、各電力会社様も、いろいろ考えていることがわかります。そういった特色が見れることもおもしろい点かと思います。
樋口:電力自由化が始まった頃、日経トレンディ様がこのリストを使わせてほしいといってきました。記事でよくある「電力特集」で、あなたに最適なプランはこれだとか、3世代同居ならばこのくらいの料金になるという記事の元デ ータとして使ってもらいました。メディアからも問合せが多いです。
エネがえるから、エコがえる? エネがえるの将来
-お話を聞いていると、電気以外にも応用が可能ではないでしょうか?
樋口:できますね。まずはガス、携帯もできるでしょう。要は、意思決定が複 雑なものを、データをすべて収集し、比較・検討しやすいようにします。
エネがえるは、当初、わかりやすいように金額に置き換えたことです。よくあるのは、シミュレーションしたときに、kWhで比較しますとか、エンドユーザーにわかりづらいものでした。そこで、「結局、いくら得なの」を示すことで受け入れられたと思います。
今後は、安いだけで選んでいてはしょうがない、お得になるだけでは意味がない可能性があります。CO2 排出削減など環境価値が求められるようになると思います。国や企業では、すでに動いています。
個人ユーザーレベルでも貢献することで、仮想通貨と紐ついて利益が得られる、税金が割り引かれるといったことを考えている人もいます。すると、エコがえるができる可能性もあります。
今後は、ブロックチェーンなども入ってきます。弊社でも、頻繁に詳しいスペシャリストの方々と一緒に勉強会やセミナーを開いています。すでに動いている電力会社やスタートアップも多いですが、将来的には太陽光と蓄電池を無料で配布し、P2P でお客様どうしを繋げ、電力を融通しあうといったことが可能になります。
そこで融通された電力に対し、現金のやりとりはめんどうになります。それを仮想通貨で清算するという仕組みが考えられます。単純に経済だけの取引ではなく、CO2の削減価値なども含んでくるでしょう。太陽光で発電する人にはそういう価値も生まれてきます。
単純な売り買いだけではなくなってきます。
-現状では、価格的にも家庭用には、蓄電池はまだまだ普及していませんね。
樋口:1つのきっかけは EVでしょう。動く蓄電池ですね。EVの普及でまた変わってくるでしょう。とはいえ、あと5年10年はかかると思います。国策で 増やそうとしているので、延びるのは見えています。
また、停電や防災の観点からも蓄電池は注目されています。
防災は国際航業の強みでもあるので、このあたりと結び付けて何かできないかを考えています。
-これからも新しいAPIが追加されるのでしょうか。
樋口:あると思います。防災情報サービスのAPIを開発しているチームもあります。きっかけはエネがえるからスタートしますが、まだまだおもしろい技術やAPIサービス化できるナレッジやデータが、国際航業には数多くあります。
KDDI様のAPI Market にも出しています。しかし、置いておくだけでは売れないと、感じています。
僕らはアグレッシブにAPI サービスを世に広め啓蒙して数多くのエンジニアや事業開発の皆様と共創できるよう、エネがえるだけでなく、いろいろ繋げていけたらおもしろいかと思っています。
-その意味では、エネがえるをきっかけに一般の方々にもわかる会社にしていくこともありますか?
樋口:そうですね。その実験台になればいいかと思っています。
その前に「もっと売ってこい」といわれそうですが(笑)。
-エネがえるのニーズは今後も拡大していく
樋口:今後も期待しています。特許も2つ取得しています。電気料金情報予測システムと電気料金プラン選定システムです。
前者は、HEMS やスマートメータの時間別電気消費量(2 週間分)から、年間 の電気量を総務省などが提供するデータをもとに独自のアルゴリズムから推計することが目的です。
後者の電気料金プラン選定システムは、推計したものから最適な料金プランを 選択するという機能です。エネがえるのサービスでは、我々はめんどうくさいことをやっているので、それが参入障壁になっていると思います。
たとえば我々はほとんどの蓄電池メーカーと NDA を結んで情報を頂いています。そうやって1社1社から正しい情報をもらうのは、すごく手間がかかります。他社さんでやりたくないような状況だと思います。
私たちも、この状況を実現するために 1 年で 15 社くらいと個別に交渉しなが ら、地道に登録しました。ようやく、勝負できる土台ができてきたと思います。
2019 年は、パフォーマンスを上げて、数字も残していければ、あと10年くらい普通に売れていくと思っています。
今は、単純なシミュレーションですが、今後は、蓄電池やHEMSのデータを持ってきて、分析するといった発想もあります。
実データが利用可能になれば、より精度も向上します。
1年どころか3年やそれ以上使用して、実データを貯めていく間に、おそらくAIや機械学習も絡んできます。
そのように実データが数十年とたまってくると、たとえば蓄電池を 15年、20年かけて回収してきたのが、8年で回収できるケースもあるとわかることもあると思います。
そうすれば蓄電池やエネルギーに関する評価がさらに高まるでしょう。
-最後にユーザー様へアピールしたいことがあればお願いします。
桑田:エネがえるとしては、これからもEVやV2Hの経済効果シミュレーション機能など時代の変化に対応した機能を追加していくので、ほしい要望あれば相談してくれるとうれしいです。
EVに関しては、まだ誰も考えたことがない機能があるかと思います。今は、EVの経済比較とかはなく、燃費の比較くらいしかありません。家に繋いだ場合の電気料金との比較とか、EVの機能を活用した新しい機能を考えていけたらと思います。
雨森:まだ、始まって間もないので、多くの方に使っていただけるようにしたいと思います。
櫻田:基本的には、今は低圧と呼ばれる部分が主体です。しかし、それ以外の もっといろいろなエリアがありますので、そういったところへの機能拡張は、今後も続けていきたいと思います。
樋口:私は、2020 年くらいに株式会社エネがえるにしようと思っています (笑)。英語にして、世界に出ていく… ブレストレベルでは話題にはしているんです。米国やドイツのエネルギー詳しい人にも「これは売れますか?」とか聞いています。会社では、その前に国内で売れよ、といわれています(笑)。でも、胸にビジョンはあります。